ブログ 高等学校卒業式 式辞

高等学校卒業式 式辞

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 まず、いま学園から巣立とうとしている二六八名の諸君、卒業おめでとうございます。そして、これまでご子息を温かく、時に厳しく育まれてこられた保護者の皆さまのお喜びも一入のことと拝察いたします。教職員を代表しまして心からお祝い申し上げます。

諸君はこの新しい体育館「打越アリーナ」で卒業式を行う初めての学年です。十一月の開館後、諸君は少ししかこのアリーナを使えませんでしたが、今日は主役として居並んでもらいました。

 いま君たちの一人一人に卒業証書を手渡しながら、その確かな成長、十二歳から十八歳の大きな変貌にはやはり嬉しく目を瞠らされました。いま君たちの胸の中には、楽しいことも辛いことも、喜びも悩みもあった浅野での六年間(約二二〇〇日ほど)の思い出と来たる将来へ向けての熱い希望を静かに宿していることと思います。そして、君たちは私にも忘れられない思い出をプレゼントしてくれました。少し気恥ずかしいのですが一昨年の六月某日の私の日記の一節を読みますと「夕飯時、生徒諸君に誕生日を祝ってもらった? 驚いた、嬉しい? トルコキキョウの花束とケーキをいただく。嬉しい、本当に嬉しい! さっそく家にメールを入れる」とあります。君たちの高二の研修旅行のさなか、長崎のホテルでの泣けるサプライズでありました。嬉しさに興奮して眠れない一夜だったのをいま思い出しました。いただいた花束は大切に持ち帰り、ドライフラワーにして飾ったことでした。そして、それより何より、日々の授業や部活動や多くの学校行事で諸君と身近に関わった先生方はなおのこと、君たちのこの卒業に嬉しさと淋しさとを強く感じていることと思います。私たちも君たちから多くのことを教えられ、たくさんの思い出をもらいました。浅野に入学してくれたことに感謝しています。本当にありがとう。

 また、昨年度、君たちが中心学年であった文化祭は台風十八号のために二日目は中止になってしまったのでした。早くから準備にかかった君たちにとっては無念で遣り切れなかったことと思いますが、無情にも晴れ上がって夏の名残りの暑い日差しの中での吉永文化祭実行委員長はじめ部門長諸君の潔い打ち上げの挨拶も心に残っています。

君たちは優しさと強さとを併せ持った素晴らしい浅野生であります。

さて、思い出話はこれまでにしましょう。予餞会での挨拶の繰り返しになりますが許してください。失礼を承知で言いますが、君たちはいわば二重の温室で育てられてきた樹木の若い苗木であります。家庭という温室、浅野学園という温室で、ご両親、先生方によって大切に育てられてきたということを自覚してください。そして、これから先はその温室を出て、自分の力量で、自分の才覚で、時に厳しい暑さや寒さという困難な状況の中、この社会(世の中)や人生に立ち向かわなくてはなりません。「温室を出る」とは、言葉の正しい意味でまさに社会に踏み出すことです。そして社会を構成している多くの(価値観や性格の違う)人々と交わって生きていかねばならないということです。今の若い人たちにコミュニケーション能力が求められていることは君たちも知っているでしょう。日がなパソコンやスマホに向き合って、誰とも口もきかずに独り自閉しているわけにはいかないのです。温室の外では多くの人々との交流が当たり前となります。他人との付き合いの鍵、第一歩は「言葉(正しい日本語)」を話せるということです。そして、その付き合いの要諦は他人を受け入れる「謙虚さ」であります。浅野は部活や学校行事を中心として活きた人交わりを大切にしてきたと自負していますから、改めて君たちに注意することではないのかと思いますが、改めていまお話ししたことを意識して一流の社会人になってください。

付け加えますと、現代の社会はボーダーレスになり地球規模に広がっていますから、交流に必要な言葉は日本語だけではありません。英語を中心とした外国語の習得も当然必要になるわけです。ただしどうか誤解しないでください。真のグローバル人材とは、ただ語学力だけではなく、広い視野を持ち、自分の考えを正しく人に伝えることができ、自己を主張すると同時に人の主張にも静かに耳を傾けられ、他者の立場を尊重し、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する気概を持ち、豊かな感受性あふれる、自分自身に誇りを持てる、そんな人間の謂であります。欲張って並べましたが、私の言わんとするところを受け止めて、どうか日本を支える国際人になってください。

温室を踏み出してからのもう一つは、文字通り社会の諸問題に目を向け、意識的に考えることの必要です。考えねばならない社会問題はたくさんありますが、一つだけ言えば、君たちの中学二年生の終わり、四年前の明日、三月十一日に起こった東日本大震災。あの時の地震や津波の怖さ、被災者への思いといった切実感は確かに私たちの中から薄れてきています。しかし四年前、震災後の休校措置の中で挙行した終業式で、君たちに、復興について、原発の問題、新しいエネルギーの問題、人の生と死等々について、しっかり自分の頭で考えて、この災害を他人事ではなく自分の問題としてほしいとお願いしました。いま自分が生きている社会について真剣に真面目に向き合うことの大切さをもう一度考えてみてください。

そして、苗木の諸君が、大地に強く根を張り、枝を大きく伸ばし、青い葉を繁らせた大樹に育ってくれることを期待してやみません。

話は尽きませんが時間になりました。最後に、私の好きな映画「スタンド・バイ・ミー」の中の台詞を君たちに贈ります。「十二歳の時のような友達はもう二度とできない・・・・もう二度と・・」。浅野で出会った友だちを大切にしてください。そして卒業した後もぜひ母校である浅野を、そして先生方を忘れることなく訪ねてください。待っています。

最後になりましたが、この卒業式にあたって、本日はお忙しいなか、多くのご来賓、また保護者の皆さまにご臨席いただきまして、第六十七回卒業証書授与式をこのように挙行できましたこと、篤く御礼申し上げます。ありがとうございました。

六年間、至らぬ点が多くあったことと思いますが、保護者の皆さまには学園の教育をご理解いただき、多大なご協力を賜りましたこと、改めて心より御礼申し上げます。

さて諸君、ひとまずお別れです。浅野の卒業生としての誇りを持って、今後諸君がさらにさらに活躍されることを祈っています。学園もより一層の飛躍を目指して頑張ります。六年間ありがとう。諸君、お元気で!

  平成二十七年三月十日

                       浅野高等学校長  阿 部 義 広