ブログ 教養講座:『ビリギャル』・『ドラゴン桜』で考える受験哲学

教養講座:『ビリギャル』・『ドラゴン桜』で考える受験哲学

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 2016年8月5日、高校1年生を主たる対象とした受験に関する教養講座を開きました。タイトルに掲げた「受験哲学」というのは、大学受験を通じて、受験勉強の内容それ自体を超えた何かを得よう!という考え方のことで、担当教員が高3担任をしていたときに、よく使っていた言葉です。

 講座は、映画『ビリギャル』を鑑賞して感想を発表したあと、担当教員による学習法・受験哲学・東大受験のノウハウに関するレクチャーと、質疑応答で構成しました。まだ高1は明確に大学受験生とはいえませんが、夏休み中の8月3日、4日に開催された東大のオープンキャンパスには多数の生徒が参加したため、東大受験の話もあえてしました。

 社会に出ると、絶対的な「正解」のない問題に突き当たることが多いものですが、「東大受験でいかに勝つか?」という問いもそうです。この問い自体が単なる受験テクニック的な話を超えた、ありそうでなかったアクティブ・ラーニングの議題として興味深いため、今回取り上げました。

 東大受験に関する作品としてはタイトルに掲げた『ドラゴン桜』が有名ですが、そのエッセンスで利用できるところと、担当教員の経験を織りまぜながら、レクチャーしました。あくまで担当者の私見であり、詳細は多岐にわたるため割愛しますが、以下のような話をしました。

〇受験は博打ではない。いかにリスクヘッジして、「負けない戦い」をするかが重要。そうすれば、勝つべくして勝てる。
〇「やる気」に対する誤解と、適切なコーチング →やる気がない時にやる方法とは?
〇先生や問題集を「信じる」ことの大切さ(『ビリギャル』・『ドラゴン桜』ともに、このメッセージを感じることができます)
〇不安・緊張に対する誤解と、適切なメンタルトレーニング
〇「詰め込み教育」批判に対する反批判
〇記憶のメカニズム(「復習」が重要な理由など)。(主要参考図書:池谷裕二『受験脳の作り方』(新潮文庫、2011年)。図書館にあります)
〇予備校・塾に関する注意点
〇「自学自習」の強み
〇英数重視型と全科目主義の比較
〇都市部の中高一貫校に通う生徒と、地方の公立高校に通う生徒を比較(担当教員は後者だったため、その実体験から)
〇「美しいノート」を作ることの是非
〇勉強する「場所」の選び方
〇「受験科目の順番」を強烈に意識すべき理由
〇センター試験との向き合い方と、得点シミュレーション
〇過去問をやる意味
〇「模範解答」の注意点
〇「出題者の意図」とは?
〇東大国語に対するリスクヘッジ(なぜ漢文・古文が重要か)
〇東大数学に対するリスクヘッジ(問題の見極めと、部分点に対する考え方。解法暗記の是非)
〇東大英語に対するリスクヘッジ(とくに問題を解く順番)


以下、生徒の感想・意見です。

(1)映画『ビリギャル』に対する感想・意見

〇どんな人でも可能性は開けるというメッセージを感じた。映画中のさやか(ビリギャルの名前)にもスランプのようなものがあり、僕も中学受験時にそれがあったので共感できた。最後には受験に父親が協力しているのをみて感動した。ひたむきに何かに打ち込むことは、人を変える力があると思った。

〇自分のやりたいことを追いかけるという点に、受験というより、道徳的なメッセージを感じた。

〇学校で成績不良の子が塾のシステムでそれなりに変わることがある。個別指導から集団指導のものまでいろいろあるが、この映画は個別指導のメリットが表れているのかなと思った。家庭生活(家族も含む)が、やはり「受験」で変わる。

〇劇中で主人公が言っていたように、「何のために勉強するのか」、という目標を持つことは非常に大切だと思った。夜も寝ない、遊ばないなど欲にうち勝てるようになりたいと思った。


(2)講座を通じての感想・意見

〇まだ大学受験を意識したことがなかったので、今回の講座は新鮮な部分が多かった。数学で解法を暗記するのには抵抗があったが、今日の話で、なにかすっきりした気になった。また、東大のオープンキャンパスに行ってみて、現役の東大生の話や模擬講義などを受けて、より東大に行きたいと思った(とくに経済学の講義はとても面白かった。)

〇東大受験の話については正直まだわからないのですが、ただ基本的な注意は一緒だと思いました。もともと音読していたり、勉強はじめはゆるいものからする(リビングで寝転がりながらプリント音読)など実践していたものもありましたが、それを体系的に整理するという観点で、とても面白かったです。とくに興味深かったのは次のような点です。
?参考書をあさるのはあまりよくないという話。実際英語の単語テストで中2のときは『ユメタン』をすみまで覚えていて、そのときは成績が良かったなあというのを思い出しました(今は若干精度が落ちたような気がします。)
?英数重視型と全科目主義の話。完全に自分は英数派でみんながそうだと思っていたのですが、違いました。
?「詰め込み教育」の話。自分も先生と同じ考えで、知識(勉強に限らず、一般教養も含む)はとても重要だと思っています。

〇「他人に教える方が定着する」というのは、実際に体験したことがあって、とても良い方法だと思う。自分はどちらかというと「集中学習」よりな気がしたので、「分散学習」に切り換えたいと思う。英語以外にも音読をしようと思う。答案をつくる上で部分点を狙いにいこうと思う。

〇言い方は悪いが、東大「ぐらい」だったら当たり前のことを当たり前にやれば簡単に受かるのだと思った(当たり前のこと、が最も難しいというのも感じた)。自らの信念を貫くことの大切さ。受験はしっかりシミュレーション・逆算をするべき。とにかく音読をする。


(3)現時点における、あなた自身の「受験哲学」を教えてください。

〇メリハリをつける。部活をやっているときには、部活のことだけに集中する。一日中勉強という中でも家族などとのコミュニケーションを大切にする(ご飯のときなど)。

〇今までの受験は中学のみなので、それだけのことを考えると、「受験は楽しいと思い込む」といったところでしょうか。実際、机に向かってカリカリするだけでなく、場所を変えたり、たまに自分の楽しみを見つけたりするのも大事かなと思います。

〇どんなときも基本を大切にしようと思った。受験も考え方次第で合否が分かれる。

〇自分の信じられる先生、参考書を決めて愚直に信じ続けた人が勝つ。勉強はつらい、ではなく、楽しいという見方。


 ところで、大学受験に関わる内容を、リベラルアーツや情操教育を標榜する「教養講座」の枠でやるのは不思議だという意見があるかもしれません。しかし、受験勉強と情操教育は二律背反ではありません。受験勉強を通じて得られた知識はもちろんのこと、自己分析・リスクヘッジして勝つ方法を徹底的に研究したり、家族に感謝したり、感情が揺さぶられる経験をすることで、人間的に大きく成長できるのはまちがいないからです。

 「勉強はつらいもの」だから「受験勉強は我慢の連続だ」といった固定観念を払拭できたら、受験スタイルも変わるし、学びの意義がより深まります。そして、生涯を通じての学びにつながるでしょう。本来「勉強は楽しい」ということを伝えるのも、ふだんの授業や教養講座の意義なので、テーマを変えていろいろと実践していこうと思います。

(文責:教養講座担当 橋本)