浅野中学校 浅野高等学校

学校長に聞く

Q1 学校の教育方針についてどのようにお考えですか?
A1 石橋元学校長、淡路前学校長が常々お話ししてきた「各駅停車」「文武両道」という学園の基本の姿勢は変わりません。加えて、浅野生には「強さ」と「優しさ」を合わせ持ってほしいということです。校訓の「九転十起」は、どんな困難にもめげずに何度も立ち向かってゆく「強さ」を、「愛と和」は他人への心遣いや物事に感動するしなやかな心を持つ「優しさ」を言わんとしています。
Q2 はじめに、浅野という学校の教育理念の根幹である「各駅停車」「文武両道」についてもう少し詳しく教えてください。
A2  本校は全員が大学進学をめざす進学校です。しかし、ただ大学に入ればいいというのではなく、将来何をやりたいのか、そのためにはどういう学部を選び、どの大学に行くのかという目的意識を明らかにした大学受験をしてほしい。そのためには、中学・高校という12歳から18歳までの多感な青春の6年間をただ<勉強>だけに終始するのではなく、部活動や学校行事にも積極的に参画して、その中で<自分>を見つけだしてほしい、ということです。
 学校では、充実したカリキュラムや教材に基づいた勉強を重視するのはもちろんですが、そうした教室で行う勉強だけでなく、集団の中での自分を知ること、友人・先輩・後輩などの人間関係、美しい自然への感動、文化や芸術・社会問題への興味、といった勉強を、多彩な学校行事や毎日の部活動を通じて、生徒諸君に主体的に行ってほしいと願っているのです。これが浅野で学校行事やクラブ活動を重視するゆえんです。これらは生徒諸君が自分の生き方や人生のモチベーション(動機づけ)を見つけ得る恰好の場であるはずです。そして、現行の学校行事や部活動に加えて、学校独自の工夫や取り組みを考えたいと思っています。したがって「勉強をしなさい」と言うだけではなく、勉強のモチベーションを重視しています。ただ答の出し方を教えるのではなく、勉強の仕方・方法を繰り返し教えます。――浅野では、まず「生き方のモチベーション」「勉強のモチベーション」を生徒たちに見つけさせることが第一にあり、大学受験はその延長上にあるものと考えているのです。
Q3 次に、「強さ」と「優しさ」についてもう少し詳しく教えてください。
A3  かつては鍛えられた肉体と精神を持った男臭い、ある種武骨でバンカラなタイプの生徒が多くいましたが、最近はスマートで上品に、言葉を換えると、ひ弱で甘えん坊に感じられる生徒が増えたように思えます。これは浅野に限ったことではないのでしょうが、何でも人を頼りにするのではなく、自分の頭で考え、自分で困難や難局に立ち向かっていく強さは勉強の面でも生活の面でも求められます。精神的に親離れをして自立していい年齢であるはずです。これは生徒諸君を見放すことではありません。温かく見守りつつ時に手を差し伸べるのが本校です。
 最近の若者は礼儀がなっていないとよく言われます。その理由として、社会の風潮が、公的な場(パブリック)と私的な場(プライベート)の区別をなくしており、大人たちがその区別を教えようとしないから失礼・無礼な行動が目に付くようになったとも言えますし、パソコンやゲーム、ケータイといった電子媒体が人とのコミュニケーション下手をますます助長しているのかとも考えられます。とにかく今の若者は他人との距離を測った気遣いを持ったつきあいがなかなかできない、自己中心的である、公共の場でのマナーも悪い、言葉が足りない、挨拶ができない、つまり社会性に欠如しているという指摘をよく聞きます。これは一を百に広げた物言いでしょう。ごく少数の無礼な人を取り上げて全体に敷衍して言うのは若者諸君には失礼だと思うのですが、私から見ると確かに一理ある指摘です。
 浅野生にはそうであってほしくありません。浅野は自由な校風ですが、ご家庭の協力をいただきながらしっかりとした「礼儀」や「人交わりの力」を持ってほしいと考えます。そして、しなやかな心や感動する心を忘れない人であってほしいと願っています。
Q4それは、最近どこの私立中学でも掲げている<人間教育><心の教育>とどう違うのですか?
A4  <人間教育>とか<心の教育>とかを区別して言うのは本来おかしいことでしょう。私立学校という場は、その建学の精神や設立の趣旨は異なっても、生徒たちの学力をつけることと同時に人としての「心の教育」をするのは当然のことだと思います。確かにかつてはその学校の方針として大学進学実績だけを強調する学校があり、それへの反動として言い始められたと同時に、時代の価値観の変化に対応したということでしょうが、浅野は戦前からバンカラな旧制中学風の自由な校風があり、それが形を変えて現在まで脈々と受け継がれて、自然と<人間教育><心の教育>となっているのであり、90年の伝統の上に作られた人づくりの校風がまずあります。そこに最近は、現代の若者の持つ独自な感覚、考え方への対応を付与しなくてはいけなくなってきたということです。
Q5 さらに付け加えられることはありますか?
A5  まず第一に、浅野に入学してくる生徒諸君はみな非常に高い能力を持っています。それを早くから発揮する生徒もいれば遅咲きの生徒もいる、勉強の面で発揮する生徒もいれば、部活動や趣味の分野で発揮する生徒もいる、浅野はそういう生徒すべてを認めている学校で、それが浅野の伸びやかな校風を生み出しているものと確信しています。たとえて言えば浅野はごった煮の料理のようなもので、いろいろな具在がそれぞれの持ち味を生かしてその美味しい料理となっていて、先生方は調理人としてそこに甘い、辛い、苦い、すっぱいといった調味料を入れて味付けをしているわけです。時にその自分の能力に気づかないまま6年間を過ごしてしまう人が中にはいます。そこで、生徒諸君にお願いしたいことは、常に自分を省察しながら──いい点を認め、悪い点は素直に改めつつ──確かな〈自分〉を早く見つけてください
 次に、(先ほどの繰り返しになりますが)生徒諸君には人間関係において確かな心構えを持ってほしいということ。すでに生徒諸君は日常的に家庭や地域を離れて多くの人と接する社会の一員です。人間は、人との関係でその距離を意識することで初めて自分を知って成長することかできるのです。わがままな自己主張や権利ばかりを主張することは許されません。社会や組織の一員になる要諦は権利意識を半減して自分の義務を問うことであり、正しい自己主張は必要ですが、人への気遣いを忘れず、自分を抑える謙虚さが何より必要です。義務と責任を自覚した浅野生となってください。──「一人はみんなのために、みんなは一人のために」〔ミュージカル『ユタとふしぎな仲間たち』(三浦哲郎原作)の歌の一節〕なのです。さらに人との結びつきのカギは「言葉」です。理由はいくつか臆測はできますが、最近の若者は言葉が足りない者が多い。日常会話自体もそうなのですが、挨拶、お礼、謝罪の言葉も出てこない。それらは最低限必要なものですし、まず「言葉」は人との関係を成り立たせる潤滑油だということを知ってください。
 浅野は「自由」な学校です。ただし自由は放縦やわがままの許容ではありません。自覚と節度に裏打ちされた自由──これこそが浅野の90年の歴史で培われた精神であると確信しています。礼節を持った自由を謳歌してください。
Q6 浅野は「面倒見のよい学校」と言われていますが、その内容について教えてください。
A6   まず誤解していただきたくないことは、面倒見がいいとは(入学した当初はそうしますが)、生徒に対して手とり足とりして全てをやってあげることではありません。生徒諸君が自立して物事を考え行えるように手助けすることです
 その要点は、生徒一人ひとりを教師全員で見つめて指導する、ということです。たとえば、ある生徒が学習面のことや生活面の悩みを持っていて指導の必要が生じたとき、担任ひとりだけではなく、学年の他の5人の先生が協力し、さらには教科担当の先生が相談に乗り、さらに中学・高校全体を大局的に把握する部署である中学部長・高校部長がアドバイスする、という形が確立されていて、客観的で的確な判断を下せるようにしています。また、問題解決のためにご家庭と密に連絡を取らせていただくこともあります。
 1クラス45人の6クラス、270人の生徒をお預かりしていますが、生徒一人ひとりがその考え方、希望、性格も違うわけですから一律の指導ではなく、学年や担任は必要と思われる生徒の面接指導を日常的に行っています。各学年のフロアの中央にある学年ごとの控室(小職員室)はいつも開放されており、休み時間や放課後は生徒諸君が勉強や生活面の質問や相談に自由に入ることができます。浅野は学校の方針の型に生徒諸君をはめ込む剛構造の学校ではありません。むしろ柔構造の学校であり、その柔軟性が浅野のもう一つの特色であると自負しています。
Q7 どのような人間を育てようとしているのですか?
A6   当たり前のことを当たり前にできる人になってほしいと考えます。これも先に述べたことの繰り返しになりますが、挨拶をする、他人への思いやりを忘れない、時間や約束を守る――こうした人間として当たり前のことができない若い人が増えている昨今、当たり前のことを教え続けていかなくてはなりません。そうした良識に加えて、困難を乗り切る強い意志や我慢強さ、物事に感動し心をうち震わせることのできるしなやかな心…。それらの上に多くの知識や学力を持つことによって初めて真の「教養」が身に付くことに気づいてほしいのです。

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